なんじゃ、こりゃ(笑)

「エブリシング・エブリウェア・

オール・アット・ワンス」

自分の理解を超えた、でも

なんだかすごいものを観たとき、

僕はいつも笑ってしまう。

ガウディの「サクラダファミリア」、

ピカソの「アヴィニオンの娘たち」、

ジョアン・ミロのでかい彫刻を観た時も

そうだった。

「なんでこんなもん作ったん。作れるん?

脳みそどうなってるの。バカじゃないの。

でもオレには思いつきもしない。

すげえなぁ」

この映画も同じだ。

今流行のマルチバースものだが、別宇宙に

ジャンプするためには、変なことをしないと

いけないという、子どもの遊びのような

ルールを設定。

靴を左右別に置く、リップクリームを食べる……。

何やってるの、あんた達。

このあたりから、本作が

アホを真面目にやってる映画だということがわかる。

この辺ですでに好き嫌いは完全に分かれるだろうな。

でもベーシックな物語はいたってシンプル。

アジア系移民家族が、バラバラになった家族の絆を

取り戻す。

反目しあっていた母と娘が再び寄り添う、

いわばうるっとくる人情噺。

でもこれを描くのに、どうして別宇宙と

闘う話にしなきゃいけないんだろう。

今の自分とは違う人生があったのではないか。

もしかしたら、別の惑星にもうひとりのオレが

いるのでは。

この気持ちはよくわかる。

わかるけど、次から次に巻き起こるアホな展開が

わからない(笑)。

わからないけど、時折爆笑させられる。

しかも、「2001年宇宙の旅」、「マトリックス」、

「レミーのおいしいレストラン」などなど、

さまざまな映画をモチーフにして遊んでるとこ

を観ると、この監督ただ者じゃないことはわかる。

フツーだったら企画書段階で絶対に落ちる映画を、

徹底的にバカバカしいギャグを実写してみせる

とんでもない勇気と根性で作ったこのスタッフには、

作り手としては「すげぇ」としかいいようがない。

僕みたいに地方を舞台に心温まる物語ぐらいしか

思いつかないものは、拍手しかない。

それにしても、これだけインディペンデントな映画が

とんでもない数の観客を動員し、

アカデミー賞を独占するんだから、世の中の人は

僕よりも皆さん、ぶっ飛んだものに

理解あるんだなぁと感心。

久しぶりに、頭の体操になった映画でした。