605P一気読み。 「絶叫」 葉真中顕

ページをめくる手が止まらず、

かなり厚い本だが、二日で読了。

一言でいうと、女がさまざま試練にあい、

闇に転落していく話だが、

そのさまは、犯罪ノンフィクション

に比べれば、なんてことはない。

よくあるといえば、ある。

ただこの本が一線を画しているのは、

登場人物たちのキャラクターの深さと、

男社会の中で翻弄され、心の彷徨を

続ける女たちの慟哭を描いてる点だ。

きちんとした親でないといけないと己を縛り、

がんじがらめになるあまり、子どもを愛せない

女性刑事。

母親から一度も愛されたことのないゆえ、

甘い言葉にすぐによろめくOL、

生活保護者を食い物にするNPO

……などなど、少し周囲を見回せば

どこにでもいそうな人間たちだ。

だからこそこの物語は他人ごとではないと

思わせる。

作者は現代の社会もきちんと見据える。

未だに「困ったときは身内頼み」を要求する行政。

女性の平均給与初度は男性の1/2、

勤労者世帯(20~64歳)の一人暮らしの女性の

2/3が貧困、シングルマザーの8割は就労してい

いるが半数以上が貧困。

そんなリアルな背景の中で、女性の転落を

見事な構成と筆力で読ませる。

ラスト主人公がとった行動はあまりに

哀しすぎるが、呪縛のような「女の幸せ」から

の逃避のようにも見える。

根が深いね。