取材余録~明太子のはなし

明太子といえば福岡名産の一つ。その製造元の一つである、やまやコミュニケーションズを取材。

長年福岡にいながら明太子のことは実はよく分かっていなかったが、今回の取材で改めて理解できたこともたくさんあった。

スケトウダラの卵巣を塩漬けにしたものが「たらこ」(鱈の子)だ。スケトウダラは朝鮮語で「明太」(ミョンテ)と言われるため「明太の子」という意味で「明太子」とも言われる。

これに唐辛子や日本酒などを配合したタレに漬け込んで熟成させたものが、「辛子明太子」だ。そのため厳密には「明太子」と「辛子明太子」は違うものだが、一般的には「明太子」と言えば「辛子明太子」を指すことが多い。


たらこに加えるタレの中身、そして漬け込む時間などは各社で異なるため、メーカーによって辛子明太子の味や食感も違う。

例えばやまやの場合、調味料には日本酒ベースに唐辛子・昆布・柚子・唐辛子などをブレンドしている。辛子明太子の元祖「ふくや」は、アルコールやみりんなどは使わないあっさり目の味付けで、唐辛子の配合にこだわりがある。

福岡には他にも、かねふく・福さ屋・福太郎・かば田、など多くの辛子明太子ブランドがある。

このうち、ふくやなどは業者から「真子」(形・状態のよいたらこ)を購入し、タレに漬け込んで辛子明太子として販売する。形のよいたらこを仕入れることで、効率よく辛子明太子を製造できるため贈答用や家庭用の商品が中心で、自社店舗やスーパー、みやげ店、通販サイトなどを通じて消費者に直接販売している。

一方で、やまやなどはスケトウダラの原卵を自分たちで選別して保存する。
原卵を塩漬けする段階から自分たちで手を加えられるメリットがある一方、形やサイズもバラバラで、中には未熟卵もある。そのため形の良いものは贈答用・家庭用の辛子明太子として使用しつつ、形が崩れたもの(質が悪いわけではない)は、家庭調理用やおにぎりやパンなどの具材に使う業務用として販売する。自社開発商品(調味料、菓子など)に使用する。

ふくやが多くの自社店舗を展開しているのは、消費者への直接販売がメーンであるからだし、原卵から仕入れるやまやなどは、業務用として使用する明太子が多いため、商品ラインナップも広くなるし飲食店(もつ鍋店など)も積極的に展開する。

ひとくちに辛子明太子メーカーといっても、それぞれ商品展開や流通戦略に大きな違いがある。表面的には理解していたつもりでいたことが、腹落ちした。