へぇー、大阪弁ってそうだったんだ。「浪花千栄子」青山誠

ホーロー看板、オロナイン軟膏のおばちゃん。
僕が浪花千栄子と聞いて一番にイメージするのは
そんなことぐらい。
もちろん後年、溝口健二や小津安二郎の名脇役
として印象深くなったが。
彼女の波瀾万丈の生涯をたどったこの作品は
著者のサクサクとした読みやすい文章もあり、
面白く一気に読める。

両親との折り合いも悪く、なんと9歳から奉公に
出された(大正5年だが、その当時でもあり得ない)、
少女が大女優になるまでの物語だから、
面白いに決まってる。

でも僕が一番だったのは、大阪弁の話。
地域によって、単語やイントネーションの
違いがあり(まぁ、これはどこもそうだが)、
同じ大阪中心部でも、歓楽街である
道頓堀界隈の言葉は「島之内」言葉と呼ばれ、
柔らかな響きがある。

現在大阪弁と言われてるものは、河内弁などに
近く、近年まで「大阪」とは呼ばれなかった場所。
かつては「異国の言葉」だったらしい。
それが「大阪弁」の代表みたいになったのは、
漫才の影響。
吉本が漫才を世に流行らせた頃、所属芸人は
河内などを始めとする、大阪南部の出身者が
多かったからだ。

「浪花千栄子の話す大阪弁こそが、上品で理想的な
本物の大阪弁だ」と褒める知識人が有名人が増え、
それが彼女の人気につながったし、
名監督が使う理由もそこにあったらしい。

確かに言葉ひとつでその人のイメージって
変わるもんね。
使い方次第で、言葉はナイフになるし、毛布にもなる。
反省。気を付けます。