師を思う 「かくかくしかじか」

テレビを見てその佇まいに

魅せられた漫画家、東村アキコさん

の自叙伝的コミックの映画化。

竹刀片手に「描けー!」と怒号を

発しながらも心温かい絵の師匠と、弟子の話。

僕にも作詞家を目ざしていたころ、

城賀イサムという師匠がいた。

物語と二重写しになり、涙がにじむ。

僕もよく怒られた。

「この詞のこのフレーズがいい」と

珍しく褒められ、満足していたら

「なぜあの一行を活かした詞を

書いてこない。次から次に仕方のない

新しいもの書きやがって」

詞で飯が食えないので、放送作家に転じますと

いったとき、淋しそうに「そうか」と一言。

その後、放送や映画で賞を受賞したとき、

喜んでくれるかと報告にいったら、「そうか」と

一言。

亡くなったあと、先生の友人、某有名音楽

プロデューサーから、「東京に来るたびに、君のこと

褒めてたよ。オレの弟子で世界に認められたやつが

いるって」と告げられ、涙が止まらなかった。

そんな師弟愛を映画は見事に描いてくれる。

いまどき、アナクロ、だけど、ジンとする。

ピュアな役、永野芽郁、やっぱりうまいね。