「漣」 福田平八郎

初めてこの絵を観たのは

いくつの時だったろう。

父に連れられた大分の美術館で

目にした。

大きな画面がゆらゆらと揺れて

いるようで、くらくらした感触を

今でも覚えてる。

録画していた「日曜美術館」で

久しぶりに再会したが、モニターで

見ても魅せられる。

自らを「写生狂」と呼ぶ画家は

あらゆるものを写し描き、

その結果、無駄なものをそぎ落とした

究極の写実、抽象的な世界にたどり着いた。

それは、「自由」という名に置き換えても

いいかもしれない。

自然をとことん見つめれば、思ってもみない

面白いものが見えてくる。

空を海を風を木々を動物を雨を海を、

ただただ観察する。

そんな楽しみ方がもしも出来たら……。

90年前に描かれた絵を観ながら

そんなことを考えた。