スーパースターもつらいね

「スプリングスティーン

     孤独のハイウェイ」

地味で内省的な映画だ。

しかしこれはぐっとくる

彼の生涯を描いたものではなく、

ボーインザUSAがヒットする前の

アルバム「ネブラスカ」を作るプロセスを

描いた一作。

リアルかどうかを徹底的に考え

歌詞を書いていくさま、創作の苦しみと孤独感を

見せる一方で、父親に虐待めいた扱いを受け

怯える少年時代の物語を展開させる。

弱さと強さ、傲慢と謙虚、真実と嘘、誰もが併せ持つ

矛と盾を、トラウマへの苦悩を、この偉大な表現者を

通して、映画は普遍的なテーマを静かにしかし

深く掘り下げていく。

ただのサクセスや自伝映画にとどまらない

とてもインディーズな香りのする小説のような

作品だ。

その世界観を、ブルースを通して描くこの監督は

ただものじゃない。

主演のジェレミー・アレン・ホワイトの成りきりぶりも

見事の一言。

一切脚本に注文をつけず、映画化を許可した

ブルースもさすがだ。