北九州芸術劇場にて 「ほおずきの家」

北九州弁が飛び交うこの芝居は、

地元を舞台にした作品の中で出色。

映画では青山真治の

「サッドヴァケイション」、

演劇では「ほおずきの家」。

舞台は、北九州のとある港町の食堂。

集まる常連たちの会話の妙、女店主、

娘の出自の秘密が

時にユーラモスに時にポエジーに、

詩情豊かに描かれる。

奥底に横たわる、朝鮮・在日への偏見、

私生児の哀しみ、

父である夭折した新進の映画監督との恋の物語は、

70年代から80年代に少年、少女期を北九州で

過ごした人には、とくに深く沁みいる。

劇中の映画に流れた、甲斐バンドの

「ポップコーンをほおばって」を聞いた

ときは、泣きそうになった。

門司区出身の釘本光の丁寧で豊かな脚本、

少年時代を小倉で過ごした横内謙介の

魅せる演出、

そして提灯を使った美しい舞台。

この芝居を北九州で観られる幸せに

感謝です。