胸が痛すぎて  ミッシング」

「ミッシング」

娘が突然いなくなり、

壊れていく母親を石原さとみが好演。

心無いSNSとローカル局の度を越した

取材の狭間で、翻弄されていくさまが

つらすぎて胸が痛い。

僕もフリーランスの放送作家として

25年ぐらいテレビを作る側にいたので

余計にきつい。

とくにドキュメンタリー制作はいろいろと

こちらも試されるし、人が悪くなる。

3年間台湾の植民地兵を追いかけた。

日本人なら受け取れるはずの恩給がもらえない。

同じ日本兵として闘ったのに。

彼は国とを相手取って恩給請求の裁判を起こした。

裁判所へは自転車で向かう男。

ちょうど雨が降り出した。

カメラに映るのは、まるで無念の涙のような雨。

それを見ながら僕は思った。

「雨降れ、振りまくれ。彼の顔を叩け。みんなが

かわいそうと思うほど。うん、……絵になるぞ」

五分の魂で言えば、映像に力が出れば

たくさんの人に彼の行動を訴えられる。

それはひいては、彼のためになる。

心底思ってる。

でも、矛盾に悩む。

そんなテレビ時代を思い出しながら、

石原さとみの悲しさに何度も涙しました。