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巨匠、四宮佑次カメラマンと一緒に仕事をさせてもらうようになって、もう25年以上になる。今では気軽にシノさんと呼ばせてもらっているが、アーティストとして敬意を抱いている。
そんな巨匠からすごいプレゼントが届いた。四宮さんの写真集「風に吹かれて」だ。
これまで何度となく観た写真ばかりだが、改めてまとめて拝見し、唸った。
スゴイ写真家は教えてくれる。どんなに、この世界が美しさに満ちているかを。普段気付かない美を、写真家が切り取って見せてくれる。
写真集を観ながら仕事で一緒に旅した日のことを思い出した。
熊本人吉の朝。
取材を兼ねて僕は早朝、街を散策してた。
すると四宮さんと出会い、お互いににやりと笑って、二人で歩いた。
彼がふと立ち止まり、川面にカメラを向けた。
見ると、一羽の鷺が石に佇んでいる。
シノさんは、でもシャッターを切らない。
5分ほどたっただろうか。
もう一羽の鷺が降りてきて、まるでつがいのように並んだ。
カシャ。
シノさんがシャッターを切った。僕はそのとき確信した。
「いい写真家は、いい風景を呼び込む」
そんなシノさんが15、6年かけて街を歩き、撮りためた写真がこの本には集められている。いい風景を呼び込む力のある写真家が見つけた、はかりしれないほどの美しさが詰まっている。
コロナで僕らは気づいた。
普段何気なくやってきたことが、どんなに貴重で大事だったか。
何度でも言おう。
写真集「風に吹かれて」も教えてくれる。
なにげない街の片隅に、大きな美が隠れていることを。