胸が痛くて蹲る。 「怪物」

三つ子の魂。

鑑賞しながら最初に浮かんだのが

この言葉だった。

幼い頃の環境、佇まいがいい年に

なっても影響を及ぼしていると

この頃思う。

でも、それがどんな環境だったかは、

視点次第で、がらりと姿を変える。

映画は三部構成で見事に真実のあやうさを

伝える。

若くて軽い先生が、息子をいじめてることに

気づき、猛然と抗議するシングルマザー

(安藤さくら)。

観客も感情移入し、学校に怒りを感じる。

これが一部。

ところが二部はがらりと変わり、先生にどうやら

罪はなさそうだと思わせる。

悪いのは子どもか。

そして三部は子どもの闇と光が描かれ、

怪物というのはいったい誰なのか、

幻惑されていく。

謎が謎を呼ぶ脚本の妙味と、真摯なテーマ、

役者陣たちの見事な演技。

あまり好きな言葉じゃないけど、

ここには弱い立場の人たちのどうしようもなさと

哀しさ、切なさを、肯定する懐の深い世界観が

ある。

映画で行間を読ませるというのは、

一歩間違えば芸術的になって、

エンタメ性に欠けるのだが、

この作品はちゃんとそこにも到達している。

是枝さんの中でも一番じゃないかな。

あと、2回は観るつもりです。