​​​​​​50年ぶりのありがとう

15歳だった。

初めて訪れた彼のねぐらは

倉庫みたいでコンクリート

打ちっぱなしだった。

名前はジュンちゃん。

板金工をやってた。

彼は言った。

「お前、映画好きらしいけど、田中登監督の

人妻集団暴行致死事件って見たか」

「いえ」

「じゃあ、(秘)色情めす市場は?」

「それってポルノ映画でしょ。そんなの

見ないっすよ」

「バーカ、お前はわかってないな。

ポルノにもいい映画はあるんだよ」

早速観に行った。

凄い作品で衝撃を受けた。

カルチャーは、もっと幅広いって教えてくれた。

「去年ジュンちゃんが君に会いたいって言ってたよ」

伝えてくれたのは、今日一緒に飲んでた同級生のFさん。

昔のシーンが蘇った。

すぐにタクシー飛ばして会いに行った。 

玄関入った途端、彼は思い出してくれた。

僕は言った。

「ジュンちゃんがポルノの良さを教えてくれた。

あれが映画を作る原点になった」

彼は返した。

「マジで?……泣くよ」

僕は静かに頭を下げたあと、気づいた。

あれから50年経ってた。

あはは。呆れるね。

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