傑作です。「しろいろの街の、その骨の体温の」 村田沙耶香

世間というジャケットと袖丈が

合わず苦しみ、強烈な違和感を

持ち続けている人を真摯に描く。

僕にとって優れた小説というのは

そんなマイノリティの哀しみを

きちんと書いてあるものを指す。

本作はまさに。

舞台は新興住宅街。

主人公は、白い無機質な街を骨の中にいるようだと

思っている地味な中学生女子。

教室のヒエラルキーに怯えながら

自らを観察者という立場に置いて、なんとか

生き延びている。

けれど体内に溜まっていく澱がやがてあふれ出し

性の目覚めとともに、どうしようもない自分を

傷だらけになりながら肯定していく……、

という物語。

最近読んだ小説の中で、これほど夢中になった

作品はない。

時に生々しく、人によっては目を背けたくなるような

描写、話の展開は作者ならではだが、

書かずにはいられない切実さに満ちている。

村田沙耶香、渾身の一冊だ。