「お客さん物語
飲食店の舞台裏と料理人の本音」
稲田俊輔
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主に広告と企画、売り上げの戦略を
考える仕事だ。
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常に視点はお客さん側でモノを考えてきたが、
飲食店側の気持ちもよくわかる。
そんな僕にとってこの本は、かゆいところに
手が届く感じで、日ごろ思っていることを
代弁してくれる。
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著者は人気の南インド料理専門店「エリックサウス」の
総料理長。
お客さんの炎上を避けるために、柔らかい物腰で
いる飲食の人の割には、結構ストレートに気持ちを
語ってくれる。
僕が最も、そうだと納得したのは、こんな文章。
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飲み物は飲みたくなければ注文しなくていい、
というのは、それはそれで正論です。
しかし、仮にそういうお客さんばかりに
なってしまうとほとんどのお店は潰れて
しまうのも、如何ともし難い事実。
基本的に料理はあまり儲かりません。
欧米で生まれた「レストラン」という
システムそのものが、お酒で利益を出す
ビジネスモデルなのです。
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……さらにこんな文章。
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イタリアンのリストランテでカップルが
それぞれパスタ一皿ずつだけを食べている
光景は、シェフに小さなため息を吐かせるでしょう。
そこで一緒にシーザーサラダをシェアし、
傍にカシオレが置かれ、食後にまたそれぞれ
デザートとコーヒーを楽しんでくれれば、
想定に近い「利益」は確保できるかもしれませんし、
オペレーションも特に乱しません。
しかしそれもやっぱり、シェフの心を少しだけ
ざわつかせます。
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お店の勝手な自己実現欲求に、お客さんの側が
いちいち気を遣って合わせてあげなければ
いけない道理は、確かに無いのかもしれません。
しかし、(これはあくまで個人的な意見ですが)
お店が作り出そうとしている世界観を理解し、
それに身を委ねることは、そのお店を最大限に
楽しむための最も確実な方法だと思います。
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……ほんとにその通り。お金を払ってるのだから
何を食べようと自由、と思ってる人も多いけど、
少なくともレストランの悦楽を味わうためには、
お客にもそれなりのルールがあるんだよな。
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スマートで楽しいフーディー、目指してます。
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