一気読み 「疼くひと」 松井久子

70歳の元売れっ子脚本家の女性と、

彼女のファンである55歳とび職

の恋愛、性愛物語。

この二人のキャラがいい。

とくに男のsex観が僕に似ていて驚いた。

彼は言う。

「ボクはね、昔から、果てた後で邪険な男になって

しまう自分が嫌いだった。(中略)

それでいつの間にか、女の中で果てるよりも、女が

悦ぶ姿を観る喜びのほうを、選ぶ男になっていた」

「ボクが思う幸せの条件はね、愛される。褒められる。

役に立つ。必要とされる」

70歳の脚本家、燿子はホルモン補充療法を受け

若さを保っている。

(女性は本来、閉経して生殖機能を失ったとき、

晴れて快楽のためだけの作業を、謳歌できる

ようになるという。燿子はその考えを信じている)

とここまで書けば性愛だけの、なんだかなーと

いう小説に見えるが、男性偏重主義、女性の社会進出の

困難さ、夫と妻のすれ違いなどを、ジェンダーの視点で

きちんと描いている。

続編の「最後のひと」では、燿子は75歳になっていて

また新しい出会いを得、さらに次の新しいステージに

行くらしい。ぜひ読んでみたい。

9784120053931 疼くひと 0 松井久子 著 単行本 2021/2/24