再読三読 「生き物の死にざま」 稲垣栄洋

名著。

三回目になるが、読めば読むほど

深く面白い。

セミは必ず上を向いて死ぬ。

しかしセミの目は背中について

いるので、空は見えない。

生まれ育った川に戻ってるサケ。

ここでパートナーを選び、

メスが川底を掘って卵を産むと、

オスは精子をかける。

そしてオス、次にメスは力尽き

死を迎える。

生み落とされた稚魚は、川の上流部で

漂う。

しかし水が湧きだしたばかりの上流部

には餌となるプランクトンが少ない。

ところが、

サケが卵を産んだ場所には、不思議と

プランクトンが豊富に湧き上がるという。

孵化したばかりのハサミムシの幼虫は

肉食だが、獲物を取ることができない。

空腹に耐えながら、母親の身体に集まり、

子どもたちはあろうことか、自分の

母の身体を食べ始める。

逃げるそぶりも見せない母は、子供たちに

腹の柔らかい部分を差し出す。

……何度読んでも、

ときに涙が、ときに唸り、ときに驚き、

生き物たちの死にざまのなんとはかなく、

なんと見事なことか。

著者の文章のうまさもあり、各生き物

に関し4Pほどだが、どの章も読み応え十分。

これからも何度も読み返す本だ。