名エッセイ 「死ぬ気まんまん」 佐野洋子

元気をもらいたときは

佐野洋子に限る。

本作はガンが転移した頃の

日々を綴ったエッセイなのだが、

全然暗くない。

だって本人が、

「私は闘病記が大嫌いだ。それから

ガンと壮絶な闘いをする人も嫌いだ。

ガリガリにやせて、現場で死ぬなら本望と

いう人も大嫌いである」

と記してるのだ。

なんといっても、がんの再発の告知を受けた日、

病院の帰りにジャガーを買った人だ。

家訓は「命と金を惜しむな」というから、

最高。

本作のおかげでこんな死生観も教えてもらった。

「要するに、自分なんて大した物じゃないんですよね。

同様に、誰が死んでも困らないわけ。例えば、いま

オバマが死んでも、必ず代わりが出てくるから、

誰が死んでも困らないわけですよ。

だから死ぬということをそう大げさに考える必要は

ない。

自分が死んで自分の世界は死んだとしても、

宇宙が消滅するわけでも何でもないんですよね。

そうガタガタ騒ぐなという感じはする」

佐野さんは2010年、72歳で亡くなった。

残念、無念。

生前主治医に、「死ぬのは怖くないけど、死に

至るまでの苦痛を想像すると、それが恐い」と

伝えた。

すると、先生、

「いまは、医者の役目としては、苦しくないように

とやりますね。

痛みは麻薬類(モルヒネ)でほとんど大丈夫ですよね。

頭はボーとしますが、痛みで苦しくてたまらんとか、

そういうことは心配しなくていいでしょう」

この言葉に勇気凛凛。元気百倍。

佐野洋子はどんな薬よりも効くねー。