稀なるノンフィクション 「嫌われた監督」 鈴木忠平

落合博満は中日をどう変えたのか

         

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プロ野球にあまり興味がない。

スポーツ新聞はもちろん

テレビ中継もほとんど見ない。

選手の顔と名前も一致しない。

そんな僕だが、本作には魅了されっぱなし

だった。

ページをめくる手が止まらなかった。

中日ドラゴンズを日本一のチームにした

にも拘わらず、監督として嫌われ続けた

落合を、筆者は本人の生の言葉、当時の選手や

スタッフの証言を綴りながら、浮かび上がらせる。

そして何よりこの本が他のノンフィクションと

一線を画しているのは、筆者自身の記者としての

葛藤、疑問、自虐を臆することなくさらけ出し、

生身のまま落合監督と向き合い、彼の本音を

唯一聞き出していくところにある。

なかでも、第4章「岡本真也・味方なき決断」は

出色だ。

2007年日本シリーズ、完全試合目前の山井投手を

9回表で交代させた、史上残る采配の裏には何が

あったのか、落合ははなぜ非情な決断をしたのか、

結果日本一になったにもかかわらず、賛否が

渦を巻く世間に監督が思うことは何か。

決してわかったような答えを出すことなく、筆者は

自問自答を繰り返しながら真実に迫っていく。

それが図らずも、ビジネスパーソンズたちにも

支持された「リーダー論」にもなっている。

大宅壮一ノンフィクション賞

本田靖春ノンフィクション賞

新潮ドキュメント賞と史上初の三冠を

達成したのも、当然だと思える

いやー、これは類い稀なる傑作です。

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