生きることにモヤモヤした
ときは佐野洋子を読む。
ほっとする、ひと息つける、
ちょこザップと同じくらい
身体が軽くなる。
本作はとくに生と死にまつわる
エッセイが多いだけに、より救ってくれる。
たとえば。
’
「いったいいくつになったら大人になるのだろう。
混迷は九歳の時より、より複雑で底が深くなる
ばかりだった。人間は少しも利口になど
ならないのだ」
’
「私はフネ(愛猫)を見て、見るたびに、人間が
ガンになる動転ぶりと比べた。ほとんど一日中
見ているから、一日中人間の死に方を考えた。
考えるたびに粛然とした。
私はこの小さな畜生に劣る。
この小さな生き物の、生き物の宿命である死を
そのまま受け入れている目にひるんだ。
その静寂さの前に恥じた。
私がフネだったら、わめいてうめいて、その
苦痛をのろうに違いなかった。
私はフネの様に死にたいと思った。
人間は月まで出かける事が出来ても、
フネの様には死ねない。
月まで出かけるからフネの様には死ねない。
フネはフツーに死んだ」
’
難しいことをさらりとやさしく
深く伝わる文章。
こんな言葉、滅多に書けない。
’