’
名脚本家の自伝的エッセイ。
止まらない。
NHKとの確執、石原裕次郎、
高倉健、田中絹代、大原麗子
その他もろもろの交友秘話、
テレビ、富良野塾への思いなどを
余すことない直球の筆記が心地よい。
’
演技論、演出論も白眉だ。
「1人の役者を輝かせる場合、みんなその長所を
目立たせようとするが、実は欠点を描いてあげた
方が、その人物の個性が光り、個性はキャラクター
を光らせることになる」
’
「かつての名プロデューサーマキノ光雄が、あるシナリオ
に対して云ったという名言がある。
このドラマには”ドラマ”があるが”チック”がない。
ドラマチックという言葉を分解するならドラマとチックは
主食とおかずである。テレビの魅力はむしろチックである」
’
「僕はスターのキャスティングに位置について一つの
考えを持ち始めていた。スターの役より上位の者、
即ち頭の上がらない者がいて、その人物を尊敬すること
その人に忠誠を尽くし切ることで彼のキャラクターを
光らせている。
人はトップに位置することより、頭の上がらない者を
持つことのほうがそのキャラクターを光らせるのでは
ないか」
’
著者はその例のひとつとして、「前略おふくろ様」をあげる。
今年90歳を迎えた脚本家のエッセイは、人間をひたすら
描いてきた作家の珠玉な言の葉が、散りばめられている。
’
