キャラが最高  「余命一年、男をかう」 吉川トリコ

ここ2週間で3冊の小説を

読んだが、お薦めするほどの

ものに出会えなかった。

でも4冊目の本作がビンゴ。

40歳独身のOL、片倉唯が

子宮がんと告知され、自分が死ぬまで

夫として、ホストを買うという話。

この唯のキャラクターがいいのだ。

わかりやすいので、解説の

朱野帰子さんの文章をひきます。

唯の信条は「だれに頼ることもなく、一人で生きて

いけるだけのお金を稼いで、収支トントンで終えること」

だから二十歳でマンションを買い、本は図書館か

古本、お酒も飲まず、昼は手作りの弁当、美容院には

行かず髪は伸ばしっぱなし、余剰資金は投資に回す。

恋愛はコスパが悪いからしたくない。

結婚も出産も同様の理由でパス。

そうして淡々と生きていくつもりだったが、

がんで余命一年と告げられる。

唯は少しほっとする。

これで人生リセットできる。

彼女は決意する。

あと一年で死ぬなら、節約なんてしない。

そこに現れたのが年下のホスト・瀬名吉高。

唯は告げる。

「死ぬまで一緒にいてもらうにはいくら払えばいい?」

果たして彼女の真意は、二人の行き先は……。

いやー、面白くて一気読みでした。

軽やかなユーモアとほろ苦いシリアスが

いい塩梅に混ざり合った、秀作です。