打ちのめされた。「こどもホスピスの奇跡」 石井光太

ー日本には小児がんなど難病の

子どもが十五万人おり、そのうち

二万人が命を脅かされているー

冒頭近くのこの文章を読んで衝撃を受けたのが

始まりで、以降ずっと僕は本作から目が離せなく

なった。

文章は続く。

難病の子供たちが一日、いや半日でもいいから、

社会に戻ってごく普通の園児や小学生としての

日常を過ごしたいと切望するのは当然だろう。

大阪のTSRUMIこどもホスピスは、そんな子供の

願いをかなえるためにつくられた施設だ。

ホスピスという名称がつくものの、成人用の

それのように死にゆく人間を看取るための

施設ではない。

難病の子供たちが短い期間であっても

治療の場から離れ、家族や友人と笑い合って、

生涯忘れえぬ思い出をつくるための「家」としての

空間なのだ。

……こどもホスピス。そんな施設があるなんて、

知らなかった。

この本は、余命いくばくもない子どもに、苦しい

治療を強いる小児医療に疑問を覚えたある医師が、

多くの人々と一緒に、こどもホスピスを設立する

奮闘を描いたノンフィクションだ。

何より本に登場する幾人もの子どもたちに、

胸が震える。

小さな体でつらい治療を受けながらも懸命に

生きるさまは、神様を見ているようだ。

僕は本を読み終えて、涙が止まらず、

こんな子どもたちの

ために、何かできないかと考えた。

調べると、福岡にも子どもホスピス設立を

めざすNPOがあった。

すぐに年会費を払い、会員になった。

心に深く残った言葉がある。

少し長いが紹介したい。

ホスピスの事務局長の言葉だ。

「ホスピスとしては、家族がたくさん利用したいと

思っていれば、できるだけそれに応じたいと

考えています。

でも容態が重くて体調の波が激しい場合は、

家族が望んでいても、なかなか十分な利用が

できない子もいます。

だからこそ、私たちは一回一回を大事に

したいのです。(中略)

私たちが目指すのは、”LIVE DEEP(深く生きる)の

実現です。

一回一回の出会いにきちんと向き合って、できるだけ

深くかかわったり、その部分で何かを提供したいのです。

短くとも、深く生きる。

僕はこの言葉をたぶん一生忘れないと思う。

そして、深く生きる子どもたちのために、

自分が出来ることはないか、

じっくりと考えていきたい。