文章のお手本 「Portrait in Jazz」

今、気づいた。

ライターでご飯を食べるように

なって、今年で35年目になる

んだなぁ。

我ながらずっとフリーランスで

よくやってきたなと、恥ずかしげもなく

思う(笑)。

書くことに悩んだとき、

お手本にしてる本。

それが、村上春樹(和田誠共著)の

「Pororait in Jazz 」だ。

僕は彼の作品の中でこれが一番好きだし、

傑作だと思う。

たとえば、スタン・ゲッツについて書いた一節。

ゲッツの音楽の中心にあるのは、輝かしい

黄金のメロディーだった。

どのような熱いアドリブをアップテンポで

繰り広げているときにも、そこにはナチュラルに

して潤沢な歌があった。

彼はテナーサックスをあたかも神意を授かった

声帯のように自在にあやつって

鮮やかな至福に満ちた無言歌を紡いだ。

ジャズの歴史の中には星の数ほどの

サキソフォン奏者がいる。

でもスタン・ゲッツほど激しく歌い上げ

しかも安易なセンチメンタリズムに

堕することになかった人はいなかった。

……どうですか。今すぐにでもゲッツの

音楽が聴きたくなるでしょ。

まだまだ前に進まなきゃ。

この本を読むたびに、僕はまた歩き出す。