生きるのがつらい人へ 「晴天の迷いクジラ」

窪美澄

根が単純な僕でさえ、

睡眠導入剤は欠かせないぐらい

だから、繊細な人はほんとに

生きづらい世の中だと思う。

この小説は、そんな方にぜひ読んでほしい。

本作には三人の主人公が登場する。

48歳のデザイン会社社長(女)、

24歳のデザイナー(男)、

16歳の少女。

3人ともそれぞれ生き難いほどの深刻な

事情を抱えている。

ある日、この3人が追い詰められて旅に出る。

目的地はクジラが迷い込んだ田舎町。

そこで見つけたものは‥‥。

というお話。

窪さんの小説はこれまで何冊も読んで

きたけど、本作が今のところ一番かな。

絶望から始まることが多い彼女の作品だが、

涙が枯れ果てたあとの、小さな希望を

見せてくれる。

解説の白石一文も記しているが、

「家族のしんどさ、親子のすれ違い、

夫婦の欺瞞、人間の弱さやずるさ」が

圧倒的なリアリティーで迫ってくる

からこそ、小さな希望が大きな救いとなる。

山田風太郎受賞作。

つらい人ほど刺さる一冊だ。

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1土谷重幸