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ページをめくる手が止まらず、
かなり厚い本だが、二日で読了。
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闇に転落していく話だが、
そのさまは、犯罪ノンフィクション
に比べれば、なんてことはない。
よくあるといえば、ある。
ただこの本が一線を画しているのは、
登場人物たちのキャラクターの深さと、
男社会の中で翻弄され、心の彷徨を
続ける女たちの慟哭を描いてる点だ。
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きちんとした親でないといけないと己を縛り、
がんじがらめになるあまり、子どもを愛せない
女性刑事。
母親から一度も愛されたことのないゆえ、
甘い言葉にすぐによろめくOL、
生活保護者を食い物にするNPO
……などなど、少し周囲を見回せば
どこにでもいそうな人間たちだ。
だからこそこの物語は他人ごとではないと
思わせる。
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作者は現代の社会もきちんと見据える。
未だに「困ったときは身内頼み」を要求する行政。
女性の平均給与初度は男性の1/2、
勤労者世帯(20~64歳)の一人暮らしの女性の
2/3が貧困、シングルマザーの8割は就労してい
いるが半数以上が貧困。
そんなリアルな背景の中で、女性の転落を
見事な構成と筆力で読ませる。
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ラスト主人公がとった行動はあまりに
哀しすぎるが、呪縛のような「女の幸せ」から
の逃避のようにも見える。
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根が深いね。
