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僕は文才があるとは思わないし、特別に語彙が豊富であったり、独特な表現ができるわけでもない。エッセイのような軽妙な文章を書くことも、得意ではない。
それでも、他の人よりは少しできているかな…と思うのが「専門的なことを素人が読んでも分かるように書く」こと。これは僕が経営者や企業の取材が多いこととも関係している。
専門的な話を聞くと、専門用語やその業界では常識とされることが出てくる。
それらを読者に対して、きちんと説明・翻訳してやるのがライターの役割だ。専門用語は、つまりどういうことなのかを一般的な用語を使って説明する。業界の背景も分かりやすく紹介する。
これが意外と最初のうちは難しい。知らず知らずのうちに自分もそちら側に立ってしまい、みんなも分かっているもの、として文章を書いてしまうからだ。
だから、読み返す時は自分が何も知らないという前提で読み返さなければならない。いちばんよいのは、何の知識も持っていない第三者に読んでもらうこと。その人が読んで理解できない箇所があれば、もっとかみ砕かないといけない。
ただ、長々と説明ばかりに終始していては、読者は本題に入るまでに読む気が失せる。それをコンパクトにまとめる、あるいは脚注に持って行ってそこで詳しく説明する、などの工夫が求められる。
まあ、これも経験を積めば、誰にでもできるようになることだけど、意識するかどうかで、そこに到達する時間は随分と早くなるはずだ。
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