「ゴールデン街コーリング」馳星周

僕が初めて新宿ゴールデン街で飲んだのは40歳ぐらいだったと思う。最初の映画「千年火」を気に入ってくれるママがいて、そのお店へ招かれたのだ。

そこには、元状況劇場の大久保鷹さんを始め芝居関係の方々がいて、仲良くさせてもらった。とくに大久保さんは、「千年火」を気に入ってくださって、「あんな渋い映画、こんなに若い人が脚本書いてたのか」と喜んでくれた。

この本は著者がそのゴールデン街でアルバイトをしていた頃の自伝的青春小説だ。

コメディアンで書評家の内藤陳さんのバー「深夜+1」をモデルにした「マーロウ」で日夜繰り広げられるドタバタをときにユーモアを交えながら描いている。

登場人物には「本の雑誌」の目黒孝二や船戸与一、志水辰夫、北方謙三、立川談志師匠など実名の方々もいる。

それにしても、内藤陳さん(本書では斎藤顕)の酒乱ぶりは相当なもので、傍にいたら大変だろうなと楽しく読ませてもらった。時代は1980年代で、まだまだゴールデン街が元気だった頃。

僕も若い時にここで飲みたかったなぁ。