一気読み!「ロンリネス」桐野夏生

タワーマンションに住む主婦たちの不倫、マウント、見栄などを冷笑的に描いた小説で、前作「ハピネス」の続編だ。

あまりにも通俗的な登場人物たちに嫌悪を覚えながら、ページをめくる手が止まらないのは、僕にも同じような醜悪さがあるからだろう。

それにしても、桐野夏生の常にファイティングな姿勢はすごい。

前作、今作とも、初出は雑誌「VERY」の連載だったのだが、文芸評論家の斎藤美奈子(僕は彼女のファン)曰く、

「桐野夏生はつまり、プチセレブのバイブルでもある『VERY』の読者に向けて、読者層と重なる女性たちを徹底的に皮肉り、批評した小説をぶつけたのである」

本書の解説を書いているのは、井上荒野(ファンです)だが、彼女の文章も秀逸だ。

「それにしても甘くない、カラい小説である。これは恋の物語だが、闘いの物語である、と私は思った(中略)私自身は、タワーマンションにもママ友にも、(現状)不倫の恋にも無縁である。けれども、このカラさは、有沙(主人公の名)の闘いは私の心をふるわせる。状況は違っても、私たちにもやっぱり同じような敵がいるからなのだと思う。私たちはみんな、闘っているからだと思う。『もっと闘え』、と私は本書を読んで、桐野夏生から言われているような気がした」

その通りだと、思わずうなずく。

最近日本に漂う、同調圧力をあざ笑い、跳ね飛ばす力を、この小説は持っている。