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去年の「このミステリーがすごい」大賞作だし、45万部のベストセラーということで、僕が今更推すのもどうかと思うが、主人公の女弁護士のキャラが最高なのでつい。
自分の価値観をお金で図り、安く見立てたものには容赦がなく、言いたいことはもちろんずけずけ、反省はなし。我がままいっぱいだけど仕事には熱心。
もちろんこの小説の魅力はキャラだけじゃない。
「僕の財産は、僕を殺した犯人に譲る」という奇抜な遺言を巡るストーリーも前代未聞だ。
作家自身も弁護士(いまは作家活動のため休止、というのもすごいね)だが、時折見える著者の仕事観なども印象に残る。たとえば、こんな行。
弁護士は悪い人から弱い人を守る仕事ではない。(中略)そうだ。法律の前では、悪い人も良い人も、強い人も弱い人も平等で、どんな悪どいしょうもないクズ野郎であっても、高貴な善人と同じだけの権利を持っている。私はそこが好きだった。
いいでしょ、この感じ。
いつも強気なくせに、自問自答して悩むところも魅力的。こんなとこ。
自分が本当に欲しいものが何なのか分からないから、いたずらにお金を集めてしまうということは、流石の私も分かっている。ただ自分では、自分に何が必要なのか分からないのだ。(中略)たが、私は頭のどこかで考えていた。たとえ一生遊んで暮らせるだけのお金があったとしても、私は仕事をしているだろう。自分なりに考えたことを実行に移して上手くいった時は嬉しいし、何もしないのでは人生があまりにつまらない。だから私は働く。
16歳の時「吾輩は猫である」を読み感銘を受け、小説を書きたいと思った少女は、まずは経済的基盤を作るために、25歳で弁護士になる。
少し時間が出来てから小説講座を受け、28歳、本書でデビュー。現在は小説に専念すべく、弁護士を休止中だそうだ。なぜなら、子どもの頃の夢をようやく実現させたから。
すごいなぁ。かっこいいなぁ。
続編「倒産続きの彼女」も楽しみです!