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年を取ればとるほどわかってくる作家がいる。
色川先生だ。
わくわくしたり、泣かせてくれたり笑わせてくれるエンタメ小説もいいけど、
先生の描く純文学の前では、子どもの作文だ。
しかも、ご存じの方も多いと思うが、
阿佐田哲也という名前で大衆小説も書いているという稀有な存在である。
ということで、今日は色川御大の言の葉。
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大体私は、自分が何をやっているのか
あいまいなところがあるせいもあるけれど、
職業なんてものは、肩書にすぎないと思っている。
もちろん、その職業で自立するのはたとえ何であろうと大変なことだし、
維持していくための努力も軽々なものではないが、
にもかかわらず、職業に喰われてしまうのは面白くない。
職業を抜いたら、あとに何も残らないというふうな人間になりたくない。
色川武大
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並みいる文学賞を受賞している先生だけど、そんなことおくびにも出さない。
人間の奥底をじっと見つめる眼がすごいのです。
僕にとって本物の作家とは、こういう方のことなのです。
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