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華麗なる一族と呼ぶにはあまりにも壮絶な家族の物語にページをめくる手が止まらない。
西武王国を築いた父、堤清次郎が暴君とは聞いていたが、好色家としても無頼だ。
セゾングループを作り上げた清二氏ら7人の兄弟姉妹の母親だけで4人、そのうち二2とは入籍をしなかった。
清二氏の母・操さんの姉妹とも関係を持ち、それを操さんも承知していた。
母を苦しめる父への憎悪で清二氏は共産党に入党する。
しかし結局、衆議院だった父の秘書になり、清次郎を支える。
誰もが西武を継ぐのは清二氏だと思ってたが、異母兄弟の弟、義明氏を父は選ぶ。
清二氏は、潰れかけてた西部デパートを継ぐ。彼は語る。
「義明君は凡庸な人ですから、誰が継いでもうまくいく本体を父は譲ったのでしょう」
80年代を代表する都市文化を作り上げ、辻井喬として小説家の顔を持つ稀代なインテリは、時折こうした辛辣な台詞をさらりと吐く。
この本には今まで知られていない堤家の内幕や清二氏の横顔が克明に描かれている。
10時間に及ぶインタビューを元にした本の最後に著者はこう記す。
堤家の筆頭継承者の最後の肉声は、どうしようもない定めに向き合わねばならなかった堤家の人たちの物語であり、悲しい怨念と執着と愛の物語だった。
2016年大宅壮一ノンフィクション受賞作。読み終わった僕の素朴な感想は、
「あー、うちは貧乏でよかった」