哀切に満ちた短編集「雨の中の涙のように」          遠田潤子

著者の作品は読むのは初めてだが、

卓越したストーリーテラーぶりと

哀切感あふれる詩情に、魅かれた。

七編から成る物語は、挫折した元大部屋俳優や、

不倫の果てにアメリカへ逃げた男、本気の浮気を

繰り返す女など、罪やけがれを背負った不器用な

人たちが主人公だ。

すべて独立した話だが、唯一共通しているのは

堀尾葉介というスター俳優とすれ違い、

人生のシーンが少し変化してくる。

そして最後の章は、堀尾自身の話になる。

この構成もうまい。

生きてれば、みんな人に言えないことの

一つや二つはある。

墓場まで持っていくのはつらいことだけど、

そうやって生きていくしかない。

でもそれでいいじゃないか。

小説にはメッセージめいたことは何も

書いてないけど、僕はそう感じた。

タイトルの由来も、

映画「プレードランナー」より、

死んだレプリカントの台詞、

「思い出も時と共に消える。

雨の中の涙のように」から。

他の作品も読みたい作家が、またひとり現れました。