感情労働とは 「ヴァイタル・サイン」

南杏子

現役の医師が書いた、看護師の

ハードな医療現場を描いた小説。

タイトルは、生命兆候のこと。

ガンで入院したときに看護師さんの

仕事がいかに大変か、わかったつもり

だったけど、いやーこれほどまでとは。

描いてあるのは、2018年の現場が

メインなので、残業は当たり前、

日勤ー深夜勤ー明けー日勤ー準夜勤ー深夜勤と、

とんでもないシフトもフツー。

最近は「ゼロ残業運動」などでだいぶ待遇は

変わったらしいが、看護師さんたちは懸命に

仕事をこなしていく。

そのさまを読んでいると、涙が出てくる。

主人公は自らに問いかける。

真面目に頑張っているのに、ミスしてしまう。

誠実に向き合っているのに、責められることが多い。

休みはあるのに、いつも睡眠不足だ。

何が間違っているのだろう。

そんな彼女に掃除係のオジサンが呟く。

「うまくいかないのが普通ですよ。病院というのは

大変な職場ですからね。

たくさんの生老病死があって、それらが常に

動いています。すべてが理想通り、思った

通りにいくはずがない」

一番印象に残ったのは、「感情労働」という言葉。

これは、肉体労働と頭脳労働に続く第三の労働形態。

看護師はその典型。

自分自身の感情を酷使して、患者や家族が求める

優しい声や表情、態度を提供するのを当然視される。

感情を酷使することを当然と思わず、仕事のひとつ

として向き合うことが大事。

そうだよね。ナイチンゲール、白衣の天使、に

押しつぶされないようにしないと、きついよね。

全ての看護師さんに拍手を送りたくなる、

そして物語も面白い、素敵な小説でした。