21歳の新進作家に拍手!

「万事快調

  オール・グリーンズ」 波木銅

2021年、松本清張賞受賞作の文庫新刊。

田舎の底辺工業高校にくすぶってる、

女子高校生3人が大麻を育て

売り、クソみたいな町から飛び出そうと

する話。

とにかく、この女子3人のキャラが秀逸。

朴はラッパーで小説好き。矢部は渋い映画通。

トリアー、キューブリック、ジム・ジャームッシュ、

グサヴィエ・ドラン、パク。チャヌクなんて

あたりががんがん出てくる。

この辺も嬉しい。

タイトルになってる「万事快調」は、ゴダールの

映画が元。

岩隈はマンガおたく。大島弓子、岡崎京子あたり

に泥ハマり。

会話もいいんだよね。

煙草を吸いながら、矢口は、あのさぁと投げかけた。

「この町……まちじねぇな。村、どう思う?」

「どう思って?」

「つまり、朴秀美はこの村、好き?ずっと住みたいって

思う?

「はぁ、バ、バカにすんな。そんなわけないじゃん」

「だよね。私もそう。こんなとこに生まれちゃったのが

もう、間違いなんだよね」

気がつけばふたりとも、雨で湿っているのも

お構いなしに歩道の縁石に腰をおろしていた。

基本ヒップホップのビートがずっと鳴っている感じの

小説で、乾いたクールなユーモアが全編に満ちている。

いやー、新進気鋭の作家という言葉がぴったりの

筆者に大きな拍手を。

松本清張賞選考委員の選評をおまけとして。

おもしろかった。「万事休す」の状況なのに、この愉快さ。作者には天性の資質が感じられた。この賞が人生を狂わせないことを切に願う。--中島京子

頭ひとつ抜きん出ていた。登場人物たちの過剰な自意識に何度も笑わせてもらった。皮肉とユーモアのセンスがずば抜けていて、これは努力では身につかないものだ。--東山彰良

正直、粗の多い作品だとは思う。巧いとは一度も感じなかった。が、際立って面白かったのは事実。--森絵都

読みながら、そのセンスの良さに何度も唸り、選考委員としてこの作家のデビューに立ち会いたいと思った。--辻村深月

先を見通しているのか、後ろが見えていないのか。

でも、少なくとも作者には今がはっきり見えている。何者なのか見極めたい。--京極夏彦