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この言葉に初めて出会ったのは、名コラムニストといわれた故・深代惇郎を描いた『天人』(後藤正治著)である。
1975年9月4日付朝日新聞「天声人語」に深代は次のようなコラムを残している。
…▼就職とは競争であり、成功する者がいるから失敗する者も出る。だが、就職の成否と人生の成否とは関係ない。ハウツー物の説く寸法に合わせて尾ヒレをつける人間には、なってほしくない。自然な自分であれば、それがよい。志は我に存す。毀誉は他人の事。
いい言葉だな、と思って調べてみると、もとは
「行蔵(=出処進退)は我に存す、毀誉は他人の主張、我に与らず我に関せずと存候」
から来ているようだ。
幕臣でありながら明治新政府に仕えた勝海舟や榎本武揚をその著書で批判した福沢諭吉に対して、勝が漏らした言葉だという。それを深代が、コラムの趣旨に合わせて意訳・引用したのだろう。
我々フリーランスが依頼される仕事の中には気の進まないものもある。
もちろんそれを断るのも自由なのだが、「一度断ると次から依頼が来なくなるのではないか」という不安や、目の前の収入を確保するために、気が進まないながらも引き受けることもある。
だが、すぐに後悔する。そして自分に問うてみる。
何のために会社勤めを辞めてフリーランスになったのか、と。
それは言わずもがな、自分のやりたいことをして収入を得るためだ。
自分が好きなことを信じ、楽しむ。他人からどう見られようと、志は自分にある。
それを貫くことは、現実社会にあっては容易ではないかもしれない。
ただ、せめてこのブログではその精神にのっとり、思うままがに書き綴っていきたい。
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