錦うどん

高校を卒業するまで、北九州市小倉北区の中井、というところに住んでいた。
そこに「錦うどん」という、うどん屋がある。
十数人入れば満席になる小さな店だ。

僕が小学生の頃にはすでにあり、たまに出前を取っていた。
もう40年近く前のことになる。

その「錦うどん」を先日、数十年ぶりに訪れた。

40年近く(あるいはそれ以上か)同じ場所で店を続けているのは、
本当にすごいことだと思う。

人口減が進む北九州市にあって、中井地区も随分と寂しくなった。
店周辺にはかつて商店街やスーパー、駄菓子屋、文具店などが軒を連ねていた。
いまやその大半が姿を消し、昼間も人通りが少ない。
それでも「錦うどん」は、お昼時になると行列ができるという。
(僕が行った時は13時少し前だったが、それでも5~6名の客がいた)

〝特別〟おいしいかというと、僕には正直よく分からない。
ただ、太めの柔麺と少し甘めの出汁のうどんは、どこか懐かしい味がする。
そんな昔ながらのうどんを愛する地域の人たちに、支えられてきたのだろう。

あとはテキパキとした接客、それでいて家庭的な店内の雰囲気も、
多くの常連を生んでいる理由の一つだと感じる。

歴史ある暖簾を守り続けていこうと頑張っている店。
そういう店を、人は応援したくなるものだと思う。