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先日、春日市で評判のフランス菓子店「パティスリールイ」のオーナーシェフ・吉村さんを取材した。2時間にわたるロングインタビューとなった。
こちらの事細かな質問に、きちんと背景から説明してくれた。「これは書いてほしくないんですけど」という内容も含めて、正直に答えてくれた。
僕があまりに細かなことまで聞くからか、少し驚いた様子で「熱心ですね」と言われた。店にまつわることを事前にネットで得ていたのでそれを確認すると「よくご存じで」。お菓子についてのある質問に対しては「いいことを聞いてきますね」。
最初の二つは取材者としては当然のことで、逆にこちらが戸惑ったが、最後の反応はやはり取材者冥利に尽きる。
「そこを聞いてほしかった」
「そのことを実は言いたかった」
「気付かなかったけど、質問されてみると確かにそうだ」
だいたい、そんな気持ちから出る言葉だからだ。
取材の途中から、吉村さんが質問に正面から向き合ってくれるようになったのが、なんとなくわかった。目の前にいるインタビュアーが「念入りに下調べをしていることが分かったから」かもしれない。特にそれ以降は、自分の心の中を洗いざらいに話してくれた気がした。
人物取材をしていて高揚感を得るのが、こうした時間だ。
聞き手は相手のことを少しでも知ろうとする。
取材される側も、その気持ちに応えようと偽りのない思いを話してくれる。
信頼感に裏打ちされた取材は熱を帯び、取材後には心地よい疲れが残る。
最高の素材を手に入れたからには、それをうまく調理して形(=原稿)にしないといけない。
真剣に答えてくれたからこそ、手を抜くことはできない。
この時間が苦しくもあり、また楽しくもある。
ライターは決して効率よく儲かる仕事ではない。
だけど、こうした瞬間が訪れるから、やめられない。
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ちなみにお菓子はこんな感じ。
見た目の鮮やかさ、複層的な味は、まさに芸術品。
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パティスリールイ